――生命を愛する。
ということは、単に無為飽食を守っているということとはたいへんに意味が違う。だらだらと長生きを考えるということではさらさらない。いかにしてこの二度と抱きしめることのできない生命との余儀なきわかれにも、その生命に意義あらしめるか――価値あらしめるか――捨てるまでも、鏘然とこの世に意義ある生命の光芒を曳くか。
問題はそこにある。何千年何万年という悠久な日月の流れの中に人間一生の七十年や八十年は、まるで一瞬でしかない。たとえ二十歳を出でずに死んでも、人類の上に悠久な光を持った生命こそ、ほんとの長命というものであろう。またほんとに生命を愛したものというべきである。
人間の全ての事業は、創業の時が大事で難しいとされているが、生命だけは、終わる時、捨てる時が最もむずかしい。――それによって。その全生涯が定まるし、また、泡沫になるか、永久の光芒になるか、生命の長短も決まるからである。
吉川英治『宮本武蔵(四)』講談社 P302 風の巻 木魂
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June 4, 2005
真の勇者
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