「平和だなあ」
青年沢庵は、若くして多感な――そして宗教家らしい詠嘆を漏らしてその側に立った。お通が、せっせと花を刈っている仕事には手伝おうともしないのである。
「……お通さん、おまえの今の姿は、平和そのものだよ。人間は誰でも、こうして、万華の浄土に生を楽しんでいられるものを、好んで泣き、好んで悩み、愛慾と修羅の坩堝へ、我から墜ちて行って、八寒十熱の炎に身を焦かなければ気がすまない。……お通さんだけは、そうさせたくないものだな」
吉川英治『宮本武蔵(一)』講談社 P69 地の巻 花御堂
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April 12, 2006
平和
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