Entry

April 12, 2006

平和

「平和だなあ」

青年沢庵は、若くして多感な――そして宗教家らしい詠嘆を漏らしてその側に立った。お通が、せっせと花を刈っている仕事には手伝おうともしないのである。

「……お通さん、おまえの今の姿は、平和そのものだよ。人間は誰でも、こうして、万華の浄土に生を楽しんでいられるものを、好んで泣き、好んで悩み、愛慾と修羅の坩堝へ、我から墜ちて行って、八寒十熱の炎に身を焦かなければ気がすまない。……お通さんだけは、そうさせたくないものだな」

吉川英治『宮本武蔵(一)』講談社 P69 地の巻 花御堂

April 12, 2006 | Anthology

track back

URL:(http://www.vagrantmuse.com/mt/mt-tb.cgi/111)

comment

post a comment

cookie:

« 畏国記20日目 | 倫理的判断を妨げるもの »

sub menu

calender

April 2006
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

latest entry